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Audiologist consultation for diagnosis and management of auditory disorders at hearing cli

難治性聴覚障害について

難聴は音声言語コミュニケーションの大きな障害となるため、長期に渡って社会生活の質(QOL)の低下を引き起こすため、診断法・治療法の開発が期待されている重要な疾患のひとつです。しかしながら、(1)難聴という同一の臨床症状を示す疾患には、原因の異なる多くの疾患が混在しており、(2)個別の疾患ごとにみた場合には、患者さんの数が少なく希少であるため、効果的な治療法は未だ確立されていないのが現状です。

 

本研究では、指定難病である「若年発症型両側性感音難聴」、「ミトコンドリア病(ミトコンドリア難聴)」、「アッシャー症候群」、「鰓耳腎症候群」、「遅発性内リンパ水腫」の5疾患に加え、難治性の聴覚障害を伴う症候群性難聴(ペンドレッド症候群、ワーデンブルグ症候群、スティックラー症候群など)を対象に、全国55施設のAll Japanの研究体制で、臨床実態の把握、治療実態とその効果の把握を目的に、症例登録レジストリシステムを用いた調査研究を行っております。希少な疾患である難治性聴覚障害に関して全国規模の共同研究を通じて詳細な臨床情報を集積することで、より良い診断・治療方法を確立するとともに、得られた知見を「診断基準」・「診療ガイドライン」の改定を通じて広く普及させることを目的としております。

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​聴覚障害について

空気の振動である音は、耳の穴(外耳道)の奥にある鼓膜を振動させます。鼓膜で受け取った空気の振動は、鼓膜の奥の中耳にある3つの骨(耳小骨といいます)により内耳に伝えられます。内耳は、カタツムリのような形をした蝸牛と、バランスを担当する前庭・三半規管からできています。

蝸牛は2回転半のカタツムリのような形をしていますが、蝸牛の基底回転で高い音を、頂上の部分で低い音を感じ取っています。蝸牛では音の振動を電気信号に変換しており、この電気信号が聴神経を介して大脳に伝わることで音を聞き取っています。この外耳から大脳までの通り道のどこかに障害がある場合に難聴を生じます。

難聴の原因となっている部位を、大まかに分けると外耳、中耳、内耳、聴神経・脳に分類することができます。このうち、外耳に原因がある場合と中耳に原因がある場合をまとめて「伝音性難聴」と呼び、の内耳に原因がある場合と聴神経に障害がある場合をまとめて「感音性難聴」と呼びます。

1)外耳に原因がある場合

外耳が原因となる難聴は、空気の振動である音をうまく鼓膜に伝えられないことにより難聴を生じます。外耳が原因となる難聴の代表としては、先天性外耳道閉鎖や外耳道狭窄(生まれつき耳の穴が閉鎖しているあるいは狭くなっている病気)が挙げられます。外耳のみが原因である場合には、補聴器の効果が高いと考えられますが、通常の補聴器は耳の穴に入れる必要があるため、先天性外耳道閉鎖や外耳道狭窄の場合には使うことが困難です。この場合、骨を通して音(空気の振動)を内耳に伝える骨導補聴器が使われます。また、最近では手術により側頭部に埋め込むタイプの新しい骨導補聴システム(人工聴覚器)の開発が進んでいます。

2)中耳に原因がある場合

中耳が原因となる難聴は、耳小骨の奇形などにより空気の振動である音の振動を、うまく内耳(蝸牛)に伝えられないことにより難聴を生じます。中耳が原因となる難聴としては、先天性真珠腫性中耳炎、耳小骨奇形、滲出性中耳炎などがあります。先天性真珠腫性中耳炎は放置すると悪化してしまうため、早めに手術を行うことが必要です。耳小骨奇形の場合、鼓室形成術などの手術で聴こえをよくすることが可能ですが、ある程度の年齢にならないと手術を行うことが困難であるため、補聴器で聴こえを補いながら様子をみていくことが一般的です。手術を行っても改善が見られない場合や、滲出液などにより通常の補聴器を装用するのが困難な場合には、骨を通して音を内耳に伝える骨導補聴器や人工聴覚器が使われる場合もあります。

3)内耳に原因がある場合

内耳は音の振動を電気エネルギーに変換し、聴神経へ電気信号を届ける役割があります。内耳の障害により、空気の振動である音を電気エネルギーに変換する機能が低下すると感音難聴となります。内耳が原因の難聴の場合、内耳の機能のレベルによって、聴力レベルが決まります。現在までに内耳の障害を直接治療する方法は無いため、難聴の程度に応じて補聴器あるいは人工内耳による補聴が行われます。人工内耳は、直接聴神経を電気刺激することで聞こえを補う機器ですので、内耳に原因がある場合には人工内耳が有効であると言われています。

対象疾患について

上記のように、難聴を呈する疾患には、さまざまな原因や障害部位が関与することが明らかとなってきておりますが、これらの疾患のうち、国の定める4条件(1)発病の機構が明らかでなく(2)治療方法が確立していない (3)希少な疾病であって (4)長期の療養を必要とするもの を満たす疾患が難病と定義されています。

さらに、本邦において患者数が一定の人数に達しないこと、客観的な診断基準が確立していることを満たす疾患に関して、患者さんの置かれている状況からみて良質かつ適切な医療の確保を図る必要性が高いものとして、厚生科学審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が指定した疾患が指定難病です。

​難治性聴覚障害に関する調査研究班では、聴覚・平衡疾患領域の指定難病のうち5疾患「若年発症型両側性感音難聴」、「ミトコンドリア病(ミトコンドリア難聴)」、「アッシャー症候群」、「鰓耳腎症候群」、「遅発性内リンパ水腫」に加え、難治性の聴覚障害を伴う症候群性難聴(ペンドレッド症候群、ワーデンブルグ症候群、スティックラー症候群など)を調査対象として調査研究を進めています。各疾患の詳細は下記をご覧ください。

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若年発症型両側性感音難聴は40歳未満に発症する進行性の難聴を特徴とする疾患です。現在までに11種類の原因遺伝子が同定されています。

Image by julien Tromeur

鰓耳腎症候群

鰓耳腎症候群は、第2鰓弓奇形、難聴、腎奇形を特徴とする疾患です。症状には個人差が大きく、3つの症状を持たない例も多く見られます。

目

アッシャー症候群

アッシャー症候群は先天性の難聴と10代で発症する網膜色素変性症を特徴とする疾患です。臨床像より3種類のサブタイプに分類されます。

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遅発性内リンパ水腫

遅発性内リンパ水腫とは、突発性または発症時期がわからない高度難聴が先に発症し、その数年から数十年の後にぐるぐる回るめまいを繰り返す病気です。

Image by Renaldo Matamoro

ミトコンドリア難聴

​細胞の中にあり呼吸を司る小器官であるミトコンドリアの遺伝子バリアントにより発症する難聴です。糖尿病などを伴う場合もあります。

Image by Amanda Dalbjörn

症候群性難聴

症候群性難聴は難聴にさまざまな奇形や疾患を伴う症候群の総称です。代表的な疾患としてペンドレッド症候群、ワーデンブルグ症候群などが知られています。

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